STEP-BD参加者におけるACID

前回前々回とACIDについて古い論文をご紹介してきましたが、実は今回のエントリーの前置きの意味もありました。今回ご紹介する論文では、STEP-BD参加者を対象にACIDの頻度や抗うつ薬との関連について調べた論文です。

Antidepressant-associated chronic irritable dysphoria (ACID) in STEP-BD patients.
J Affect Disord. 2008 Jun 17. [Epub ahead of print]

対象となったのは、STEP-BD最初の1500例(双極I型:62.7%、双極II型30.1%、特定不能:7.2%)です。研究参加時に少なくとも1ヶ月以上ユーサイミックで、その後うつ病エピソードを来して、少なくとも1年間以上経過を追う事ができた症例です。

上記を満たす症例のうち27症例が抗うつ薬投与を受けており、56症例が受けていませんでした。これら2群間でACIDの存在に特に注目して比較解析がなされました。

結果ですが、抗うつ薬投与群では非投与群と比較しておよそ10倍ACIDを来しやすい事が分かりました。(Hazard ratio=9.95, CI=1.103-89.717, P=0.04)
しかし、性別および過去の抗うつ薬に関連した躁病スイッチの既往で補正すると、hazard ratioは1.05まで低下しました。

結論としては、この研究からはACIDは独立した減少としては考えにくく、抗うつ薬に関連した気分スイッチの一形態と考える事ができるとしています。

コメント

本文を見てみましたが、ACIDと診断されたクライエントは、抗うつ薬投与群で4症例、非投与群で1症例ということですから、このスタディだけでは何も言えないかと思います。また、もともと長期の抗うつ薬投与に伴うとのことで、症例報告では平均6年間以上となっていますので、観察期間の問題もあるでしょう。

今後大規模なスタディが行われる可能性も低いと思われますので、あまりメジャーな概念にはなりそうにありませんが、臨床的には、

  1. 抗うつ薬に関連した気分スイッチの既往があるクライエントには、抗うつ薬はなるべく投与しない。(特に長期間漫然と維持療法を行わない)
  2. ACIDと思われる病態を呈した場合、抗うつ薬の減量中止が有効である場合がある。

といったことが言えるかと思います。個人的には、大うつ病性障害と診断されているクライエントの隠されたバイポラリティとACID、およびsソフトバイポーラとの関連性が気になりますね。

 

 

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