大うつ病性障害における自殺傾向に対して、抗うつ薬に加えてリスペリドン・オーグメンテーションの効果について

最近エントリーの更新が滞っていますが、何かと本業のほうが忙しくて申し訳ありません。あまり無理をせずに、まったり続けていきますので、時々のぞきにきてください。

では、今回のエントリーです。自殺傾向を伴っている大うつ病性障害クライエントに対して、抗うつ薬に加えてリスペリドンのオーグメンテーションを行った際の効果についてのパイロットスタディです。

Efficacy of Risperidone Augmentation to Antidepressants in the Management of Suicidality in Major Depressive Disorder: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Pilot Study.
J Clin Psychiatry. 2008 Jul 29:e1-e9.

対象は、DSM-IVで自殺傾向を伴う大うつ病性障害と診断された24例の成人です。
参加者はランダムにこれまでの抗うつ薬に加えて、リスペリドン(0.25-2mg)もしくはプラセボ投与群に割り付けられ、8週間の二重盲検デザインで行われました。
自殺傾向に対する臨床的有効性、抑うつ症状、衝動性に関して、試験開始4日後、以後4週までは毎週、8週までは隔週で評価が行われました。同時に各受診日に副作用に関しても調査が行われています。

結果ですが、リスペリドンは、大うつ病性障害クライエントの自殺念慮を有意に減少させました。また、リスペリドンの全体を通した有効性は、プラセボ投与群と比較して勝っていました。
リスペリドンの効果発現は、投与開始2週間と早く、8週目終了まで継続していました。
自殺傾向以外の症状改善についてもリスペリドン群の方が勝っており、試験完了率も高く、低容量リスペリドンは十分な耐用性を持っていました。

コメント

この論文では、自殺傾向はBeck Scale of Suicide Ideationで、抑うつ症状はMADRS、CGI-Sで評価されています。割り付けについてちょっと気になったのが、プラセボ群では男女比がほぼ1:1になっていたのに対して、リスペリドン群では女性11例に対して男性1例と、極端な男女差が認められたところです。まあ、パイロット研究ですので、あまり厳密な結果ではありませんが、非常に面白いデータだと思います。

自殺傾向の有る無しに関わらず、大うつ病性障害クライエントにSSRIやSNRIで薬物療法を開始する場合、効果発現に多少時間がかかる事、activation syndromeが認められる可能性があることなどから、特に治療開始初期に、ベンゾジアゼピン系抗不安薬やスルピリドを併用することも多いかと思います。また、アリピプラゾール、オランザピン、リスペリドンについては、オーグメンテーションが有効であるとする報告がいくつか出ており、とくにアリピプラゾールに関しては、FDAが認可していますので、これらの薬剤を使用している治療担当者もいるかもしれません。

古くは、リチウムのオーグメンテーションは、再発予防効果、自殺予防効果があるといわれてきましたが、血中濃度の測定が必要であったり、少数ですがNSAIDsなどの薬物相互作用により急激な血中濃度上昇の危険性があったり、大量服薬時の安全性が高くないなどの理由から、メンタルクリニックなどでは使用しにくい薬剤になっていました。もし、第2世代抗精神病薬で、抗うつ作用に関する増強作用と自殺予防作用がはっきりとしたエビデンスとして確立した場合には、これらの外来環境において非常に利用しやすい選択肢になるのではないでしょうか?

ただし、薬物相互作用には注意してください。特にパロキセチンは、他の抗うつ薬と比較してCYP2D6の阻害作用が強いので、リスペリドンやその代謝産物の血中濃度を上昇させる可能性があります。PubMedで検索すると、この組み合わせでセロトニン症候群を来した症例報告も出てきますので、用量と副作用のモニターは慎重にした方が良いでしょう。

参考エントリー

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