単極性うつ病から双極I型、II型障害への移行に関する予測因子:5年間の追跡調査

今回のエントリーは、単極性大うつ病性障害と診断されていたクライエントを5年間追跡調査し、どの程度の割合で双極性障害へと診断が変化したかを調べるとともに、双極性障害と診断が変化する予測因子を報告した論文です。

Predictors for Switch From Unipolar Major Depressive Disorder to Bipolar Disorder Type I or II: A 5-Year Prospective Study.
J Clin Psychiatry. 2008 Jul 29:e1-e9.

Vantaa Depression Studyからの半構造化面接法にて大うつ病性障害と診断された269症例が対象となりましたが、外来クライエントが82.9%、入院クライエントが17.1%でした。
1997年から2004年までの間に、6ヶ月後、18ヶ月後、5年後のフォローアップを受けています。

結果ですが、
最終的には、248症例(92.2%)で解析に十分な情報を得る事ができました。
その中の、22症例(8.9%)が双極性II型に、7症例(2.8%)が双極I型障害に診断が移行しました。
診断が移行するまでの期間の中央値では、双極I型障害に移行したクライエントで双極II型障害に移行したクライエントと比較して有意に短い結果が得られました。
コックス比例ハザードモデルを用いた解析からは、

  • 大うつ病性障害の重症度 hazard ratio = 1.08
  • 強迫性障害 hazard ratio = 5.00
  • 社会不安 hazard ratio = 2.04
  • B群パーソナリティ障害の症状数が多い hazard ratio = 1.10

が予測因子として得られました。

コメント

DSM-IVの診断基準によると、うつ病エピソードを初発とした双極性障害は、後に軽躁病もしくは躁病エピソードを来すまでは、単極性大うつ病性障害と診断されます。英語ではswitchと表現される事が多いようですので、私は「移行」という風に訳してしまったのですが、もともと大うつ病性障害であったクライエントが何らかの理由により双極性障害に文字通り病態として変化していくのか、それともクライエント自体はもともと双極性障害であって、ただ単に最初のエピソードが大うつ病エピソードであったために診断名が変わるだけなのか、どういった背景があってswitchと表現されているのか完全には理解できませんでした。
ただ、さまざまな生物学的なパラメータは、大うつ病性障害と双極性障害の違いを明らかにしてきていますので、個人的には後者のようにとらえています。

この手の研究は、実は他にもいろいろと報告があるようで、それらから出てきた数字もだいたいここに示されているものと大差が無いようです。つまり、外来受診する程度の重症度の大うつ病性障害のクライエントのうち、およそ10%程度は実は双極性障害である可能性が高いということだと思います。
現在、初発の大うつ病エピソードについては、順調に回復できた場合は1年から2年くらいで治療終了になる場合が多いと思われますが、この辺りの情報をきちんとクライエントに伝えておく事も重要になってくるかもしれません。

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